「コロナウイルス禍における企業の採用活動への影響について」 929社の人事・採用担当者に緊急アンケート どうなる?2021年新卒採用

株式会社アールコンシャス代表取締役/一般社団法人セカンドキャリアプロジェクト代表理事一ノ瀬 真理子

いよいよ新卒採用活動がスタートというタイミングで新型コロナウィルス感染症が流行し、2021年新卒採用は、企業にとっても学生にとっても未だかつて経験したことのない採用・就職活動となっています。

先行きが見えない状況ではありますが、現時点(4月21日)での採用活動について、CareerMap が929社の人事・採用担当者を対象にアンケート調査を行いました。各社の2021年新卒採用活動状況をレポートします!

■調査概要
◉実施時期/2020年4月14日〜4月21日
◉回答対象企業/専門学校卒採用をCareerMapで実施している企業
◉回答社数/929社
◉回答者/企業の人事・採用責任者

【現状1】89%の企業が、コロナ禍の影響「かなりある」「ややある」と回答

まず、「新型コロナウィルスの採用活動への影響」については、89%もの企業が「かなり影響がある(57%)」「やや影響がある(32%)」と回答しています。

例年3月、4月に開催される合同会社説明会等が軒並み中止となるなど「学生との接点や自社アピールの場が持てない」と感じている企業が多いようです。

コロナウィルスに関するグラフ

次に、集計結果を「建築・土木・研究・開発・整備」「フード・ホテル」「医療・介護・教育・スポーツ・公務員」「服飾・販売・音楽・マスコミ」「ビジネス・デザイン・コンピューター」「美容・理容・エステ・リラクゼーション」「その他」の7業界別で見てみましょう。

特に「フード・ホテル」、「美容・理容・エステ・リラクゼーション」の2業界においては9割以上の企業が「かなり影響がある」「やや影響がある」と回答しており、4月7日から続く緊急事態宣言の影響を大きく受けている現状がわかります。

「かなり影響がある」「やや影響がある」と答えた企業の割合が最も低かったのは「建築・土木・研究・開発・整備」業界で77.4%にとどまりましたが、5月4日現在、大手ゼネコンで緊急事態宣言終了まで現場を閉所するといった対策も拡大しており、今後の状況によっては業界の採用状況に影響が及ぶことも十分に予想されます。

コロナウィルスに関するグラフ

【現状2】採用数に「変更なし」6割、採用活動は「予定通り」半数近く

このような状況ではありますが、「新卒採用予定数の影響」については、全体の約6割(58%)の企業が「計画通り」と回答しています。「未定」と答えた32%の企業については今後の状況によって下方修正の可能性も否めませんが、現時点で「下方修正」を決めた企業は9%にとどまりました。

コロナウィルスに関するグラフ

「4月上旬時点での採用活動の状況について」は、業界別で見ると、「建築・土木・研究・開発・整備」業界では46.7%の企業が「予定通り進めている」と回答。「一部見合わせているが進めている」「基本的には進めているが一部見合わせている」を合わせると83.9%の企業が何らかの形で採用活動を継続させていることがわかります。

また、新型コロナウィルスの影響が大きいとされる「美容・理容・エステ・リラクゼーション」業界においても、46.2%の企業が「予定通り採用活動を進めている」と回答しており、「一部見合わせているが進めている」「基本的には進めているが一部見合わせている」を合わせると80.6%の企業が採用活動を継続させています。

コロナウィルスに関するグラフ

このような厳しい状況においても多くの企業が採用活動を継続する背景としては、近年、各業界が抱えてきた「慢性的な人材不足」という課題があるようです。

「コロナに関係なく人材不足は常にあるので変わらない」(美容・理容・エステ・リラクゼーション・30名未満)「慢性的な人不足に変化はないため、従来通りの採用計画が継続される」(建築・土木・研究・開発・整備・1000名以上)という声が多く寄せられていました。

また、「自社のイズム、スタイルを継承するのには新卒は大変重要だと感じる」(美容・理容・エステ・リラクゼーション/30名未満)「会社の発展のためには毎年2〜3人は継続して確保していきたい(美容・理容・エステ・リラクゼーション/3名未満)といった声もあり、新卒を単なる労働力採用ではなく、組織作りや組織活性の役割があると考える企業の姿勢も伺えます。

【現状3】現在までに、学生からの「応募はなし」がほとんど

では、就職活動中の学生の動きについてはどうでしょうか。
企業側のアンケート情報から読み取ると「学生の応募はまだない」が43%、「昨年と変わらない」が21%となっており、新型コロナウィルス禍により就活生の動きも停滞していることがわかります。

緊急事態宣言の延長を受けてさらにこの状況は続くとみられますが、6割の企業が採用予定者数を「計画通り」とし、多くの企業が採用活動を継続する方針であることを考えると、企業・学生ともに徐々に「コロナ影響下における新たな就活」にシフトしていくことが予想されます。オンラインの活用など、対面でない方法での採用活動がキーになりそうです。

コロナウィルスに関するグラフ

【現状4】現状を「好機」と捉える企業が43%!

企業・学生双方にとって厳しい状況ではありますが、新卒採用においての現時点での状況の捉え方について「好機と捉えている」「どちらかといえば好機と捉えている」という回答が46%と、「危機と捉えている」「どちらかといえば危機と捉えている」(31.5%)を上回りました。

理由としては、「WEB対応が本格化することで、どこでも会社説明が出来るようになる。(教育/1000名以上)」「理念やビジョンをしっかり提示した会社が強くなる。(美容/0〜99名)」「通年採用が更に加速する。(建設/100〜299名)」「他業種に流れていた求職者が回帰してきて求人がしやすくなる。(医療・介護・教育・スポーツ・公務員/30名未満)」といった、オンライン採用の整備、自社ブランディングの構築、通年・中途を含めた多様な採用方法など、「これまでの採用活動を見直し、ステップアップさせる機会」と捉える意見が多くみられました。

(好機と捉えている 理由)

  • WEB対応が本格化することで、どこでも会社説明が出来るようになる。(教育/1000名以上)
  • 理念やビジョンをしっかり提示した会社が強くなる。(美容/0〜99名)
  • 通年採用が更に加速する。(建設/100〜299名)
  • 他業種に流れていた求職者が回帰してきて求人がしやすくなる。(医療・介護・教育・スポーツ・公務員/30名未満)
  • この様な状況に影響されない企業を選択する学生が増えると思われる。(医療・介護・教育・スポーツ・公務員/300名以上、1000名未満)
  • 収束後には一気に募集が増え、活性化する。(飲食/30名未満)

(危機と捉えている 理由)

  • 同じ業界の景気状況により、人員の流出が激しくない限り1、2年採用しない。(ビジネス・デザイン・コンピューター/30名未満)
  • 経済が落ち着く見通しがもてるまでは、採用を控える企業も出ると思う。(IT/30名未満)
  • オンラインでの面接など柔軟な対応が可能な企業へ人材が流れるのではないかと懸念している。(IT/30名未満)
  • 学生と直接会える機会がほとんどなくなり、母集団形成が困難となる。(製造/300〜999名)
コロナウィルスに関するグラフ

【現状5】夏のインターンは「検討中」が多数

夏のインターンシップについては「開催を取りやめる」と回答した企業は、各業界2%から5%にとどまっており、一番多い「フード・ホテル」業界でも9.3%。

インターンシップの開催を予定していたほとんどの企業が「予定通り開催」「開催時期を見直す」「検討中」と回答しており、現時点で「開催を取りやめる」と決定した企業が少数派であることから、新型コロナウィルスの収束状況を見て「可能な状況であれば開催したい」という各社の想いが読み取れます。

コロナウィルスに関するグラフ

【まとめ】オンライン化、自社ブランディング、通年採用…新卒採用は新たなるステージへ

アンケート結果から、2021年新卒採用は、コロナ禍による景気不安で採用を控える企業がある一方で、現状をむしろ好機と捉え、新卒採用により注力したいと考える企業も多いことがわかります。コロナ収束が前提となりますが、多くの企業が夏のインターンシップ開催にも前向きです。

就活が停滞している今の時間を学生たちは「自己分析」「業界・企業研究」「面接対策」などにあてています。企業側も、自社の魅力を学生にしっかり伝えるために自社のブランディングをしっかり行い、インターンシッププログラムの見直し、WEBやオンラインの整備、新しい採用方法の導入を再検討するなど、新たな挑戦の機会にしてはいかがでしょうか。

先が見えないのは企業も就活中の学生たちも同じです。学生目線に立ったオリジナルな採用方法や訴求方法を模索し、自社の魅力をしっかり伝えていくことが就活中の学生へのサポートにもなります。2021年の新卒採用は、「企業も学生も、ともに頑張った」といえる年にしたいですね。

今後、新卒採用はどうなると思いますか

  • 収束するようであれば秋~冬にかけて合説イベントが多くなると思う(建築・土木・研究・開発・整備/300名以上、1000名未満)
  • サービス業の就職困難が予想されるので建設業には追い風になる。(建築・土木・研究・開発・整備/300名以上、1000名未満)
  • かなり厳しく、コロナによる景気停滞により新卒採用の概念が崩れる可能性を予想する。体力がもたなければ採用は難しい。(建築・土木・研究・開発・整備/
  • コロナの感染が落ち着き次第、急ピッチで採用の活動が学生・サロン共に始まると思うのでそれにそなえたい。今の状況のなかでは携帯などのSNSでサロンを見るしかできないのでサロン選びの方法がよりSNS化しそう。(美容・理容・エステ・リラクゼーション/30名以上、100名未満)
  • 美容業界においては人材不足なので、例年通りだと思う。(美容・理容・エステ・リラクゼーション/30名未満)
  • オンライン化に対応できるかどうかが採用力の要素の1つになっていくと考えている。(医療・介護・教育・スポーツ・公務/100名以上、300名未満)
  • WEB対応が本格化することで、どこでも会社説明が出来るようになる。(教育/1000名以上)」
  • 通年採用が更に加速する。(建設/100〜299名)
  • 新卒へのこだわりがなくなっていく。(その他/30名未満)
  • 理念やビジョンをしっかり提示した会社が強くなる。(美容・理容・エステ・リラクゼーション/30名以上、100名未満)

この記事の著者

株式会社アールコンシャス代表取締役/一般社団法人セカンドキャリアプロジェクト代表理事一ノ瀬 真理子

株式会社アールコンシャス代表取締役、一般社団法人セカンドキャリアプロジェクト代表理事。阪神間地元就職サイト「サクラナビ」の企画制作をきっかけに、地元企業と学生の出会いのイベント「もうひとつの就活」を運営するなど、企業と学生、双方向に対して「楽しく働く」をテーマにサポートを行なっている。

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